fc2ブログ

ともだちの内面。物語性。

光村健 ART WORKS より


その絵を見たときに心が波立った。
小さな引っかき傷のようなものが付いて、ざわざわと感情が押し寄せてくる。
なんて迫力のある肖像画なんだろう。
そして、強い意志のようなものに満ちている。
感情で形作られたような肖像画の一連のシリーズは、否応なく、ものがたりの中に私たちを引き込んでいく。
捕らえられて抜け出すことすら難しい。
濃密な感情の霧が視界をさえぎって、息継ぎをするのがやっとになる。
目が離せないとはこういうことかもしれない。
絵を見ているはずなのに、映画や本のストーリーを追っているようだ。

もしかしたら、画家、光村健の内面の物語をわたし達は見せられているのかもしれない。
ものすごいスピードで、展開していくドラマティックなストーリー。

画家と知り合ったのは、もう20年近く前。
よく知っているともだちの筈だったのだが、内面は思いもよらない変貌を遂げているのだろう。
しばらくぶりにみた彼の作品から、一瞬、昔の面影を探すことが難しかった。

こういう再会は、エキサイティングだ。


光村健 ART WORKS


スポンサーサイト



テーマ:::Life Style - ジャンル:ライフ

2010.04.12 | コメント(4) | トラックバック(0) | プライヴェート

LA CUCINA

zanizani


キッチンについて、思うことはいろいろある。
使いやすさや、デザイン性の高さや、ディティール。
金物等にも、とにかくわたし達は、細かく細かくこだわるのだが。

それでも、ふとした時に思い出すのは、友人のうちを訪れたときの、湯気の立つ食卓。

枯葉を踏んで木枯らし吹く寒い外を歩いてきて、家の前に立ち、見上げた小さなキッチンの窓、温かな橙色の光があふれる情景。
鍋から、ことこと、ぐつぐつと密やかに音が聞こえる、懐かしいイタリアの台所だったりする。

おいしい料理は、ふりそそぐ愛情に比例しているとわたしは思う。
家族の喜んだり歓声を上げる声が聞きたくて、世界中のキッチンでいつも、おいしい料理が作られている。

信じられないくらいに悲しいことや、立ち上がる勇気のないときにも、一椀のスープが慰めをくれる。
胃の中が温まって、元気が少しずつ出てくる。

誰かのために、料理を作るとき、幸せになるようにと祈りをこめながらおいしいものを作っていく。
キッチンはそういう場所であってほしいと、わたしたちは願いながら、キッチンのデザインをしている。



写真はzani & zani
音符のようなキッチンツールたち。  zani & zani

テーマ:デザイン - ジャンル:学問・文化・芸術

2009.11.02 | コメント(4) | トラックバック(0) | プライヴェート

SEA


海を見てるとほっとする。
海のないところで育ったせいか、海に対する思いも強くて、子供の頃からずっと海の近くで暮らしたいと思っていた。

今住んでいる台湾の自宅は、海まで自転車で15分くらい。
朝や、夕方、涼しい時間帯に時々サイクリングしている。
明け方の海もきれいだけれど、夕暮れの海も心が穏やかになる。
もう、夜に近づいていると感じる時間帯。どんどん変化する空。青い闇。

その時間に海を見に来る人は、みんな海だけを見ている。
まるで少しの変化も見逃したくはないかのように。



テーマ:::Life Style - ジャンル:ライフ

2009.09.03 | コメント(0) | トラックバック(0) | プライヴェート

夏の庭

photo by john



夏の庭はとても美しい。

子供の頃からずっと夏が好きだった。
焦がれるように南の島へ何度も旅をした。
潔い夏の空の青さや、木々の様々な緑の揺れ、生命力の強い草花たちの匂い。
日焼けをしただるい体で夕暮れを散歩するのも、涼しい夜風に吹かれておいしいお酒を飲むのも、夏が一番だと、思っている。

夏の庭には、様々な匂いがする。
沖縄の離島で、泊まった民宿の庭。
夜、馥郁たる匂いを放っていた小さな白い花。甘くて涼しい夜の匂いがしていた。
カプリ島の王宮の遺跡。むっとする草いきれと乾いた潮の匂い。誰かがジャズを演奏していて、レモンの花の匂いが、かすかにした。
友人の家に招かれたときのこと。
その人の所有する広大な庭には、ユーカリの木が前庭に茂り、プールには画家がモザイクで描いた人魚、その隣の植え込みからはアーモンドの花の匂い。軒先には野生のルッコラ。

そして今日、わたしの住む台湾の夏の庭からは、よく知っている匂いがした。
でもそれが何なのかすぐには分からなかった。
オレンジ、それも青い小さなもの。そして、ミント。ローズマリー。青い葉っぱの匂い。
海の匂い。名前の分からない赤い小さな花。プルメリア。どれも少しづつ混じっている気がする。

多分、風の流れでそういう自然の調合になったのだろうが、それはわたしのよく知っている匂いに限りなく近かった。いつもつけている香り。そして探し求めている香り。

わたしは、夏の庭の匂いがとても好きなのだと思う。
手元にある香水はすべて夏の庭の匂いがする。
旅先で蓄積されていく匂いの断片を常に追い求めているのだと思う。

夕方、庭先でかいだ匂いは偶然の調合。
でも、確かにわたしの大好きな夏の庭の匂いだった。







テーマ:::Life Style - ジャンル:ライフ

2009.07.19 | コメント(0) | トラックバック(0) | プライヴェート

Bilbao Museo Guggenheim 

BILBAO

写真を撮ったのはJOHN だが、わたしも BILBAO に滞在したことがある。
JOHN は、去年の夏に行ったのだけれど、わたしはもう少し前に一人でこの街を訪れた。

ミラノから飛行機で直ぐだった。
この街には、ともだちが住んでいて、案内してもらったのだ。
もっとも、しごく小さな街だったので、わたしは直ぐに一人で色々なところに出かけた。

パートナーと知り合う前まで私の旅は、いつも大体一人旅だった。
カメラは持たないので、殆んどの旅に写真はない。でも、昨日の事のように覚えている。
匂いで思いだす旅もあれば、色彩で思いだす旅もある。
BILBAOは、後者のほうだ。

どんよりと曇った空の色。それが、わたしの思いだすBILBAOの色だ。
着いた日から天気が余り優れなかったせいかもしれない。小雨がいつも降っていた。

街の印象は、良かった。木曜の夜から始まる彼らの週末は長い。夜通し絶えない人の群れ。
どこでも人で溢れかえっているクラブもバルも、賑々しく楽しげだった。
夜は明るく深く果てしない長さだ。
ホテルが一晩取れなかったのだが、朝まで問題なく過ごせたから、きっと彼らにとっては日常なんだろう。
一転、昼間の街では、川沿いの散歩が楽しかった。きれいな動線。
散歩の人々が心地よく過ごせるよう配慮されたデザイン。
地下鉄は、Norman Foster の設計だ。

その中で一際目立っているのが Bilbao Museo Guggenheim だ。

古い路地の隙間から初めてそれを見たときの衝撃は忘れられない。
わたしは、一人でその衝撃と感動にすっぽり包み込まれてしまった。
誰かに何かを伝えたいとも思ったのだが、言葉も見つけられなかった。
呆然と立ち尽くすのが精一杯だったのに、その後急激に愉快な気分が襲ってきた。

建築を見て、あんな風になったのは初めてだった気がする。

今まで信じて守ってきた美しさの基準が、その一瞬で覆された。
Frank O. Gehry の作品をそれまで、奇妙で奇抜な建築だと思ってきた。
わたしは知らなかったのだ。
知ったときにはもう、Deconstructivism のうつくしさに呑み込まれてしまっていた。

何かを見た後と前で、自分の中の基準がすっかりと変わってしまう経験をしたことが、ありますか?

わたしにとって、Bilbao Museo Guggenheim はそんな経験のひとつだ。


Bilbao Museo Guggenheim 

VIRTUAL TOUR



テーマ:建築デザイン - ジャンル:学問・文化・芸術

2009.06.11 | コメント(4) | トラックバック(0) | プライヴェート

«  | ホーム |  »

プロフィール

DUMAS DESIGN STUDIO

Author:DUMAS DESIGN STUDIO
いずれもイタリア、スペインに造詣が深いデザインチーム。
インテリア、エクステリアの仕事をはじめ、家具や装飾品のコーディネート、デコレーションも行う。

最新トラックバック

人気ブログランキング

FC2 Blog Ranking

FC2 Blog Ranking

FC2カウンター

検索フォーム

QRコード

QRコード