夏の庭
夏の庭はとても美しい。
子供の頃からずっと夏が好きだった。
焦がれるように南の島へ何度も旅をした。
潔い夏の空の青さや、木々の様々な緑の揺れ、生命力の強い草花たちの匂い。
日焼けをしただるい体で夕暮れを散歩するのも、涼しい夜風に吹かれておいしいお酒を飲むのも、夏が一番だと、思っている。
夏の庭には、様々な匂いがする。
沖縄の離島で、泊まった民宿の庭。
夜、馥郁たる匂いを放っていた小さな白い花。甘くて涼しい夜の匂いがしていた。
カプリ島の王宮の遺跡。むっとする草いきれと乾いた潮の匂い。誰かがジャズを演奏していて、レモンの花の匂いが、かすかにした。
友人の家に招かれたときのこと。
その人の所有する広大な庭には、ユーカリの木が前庭に茂り、プールには画家がモザイクで描いた人魚、その隣の植え込みからはアーモンドの花の匂い。軒先には野生のルッコラ。
そして今日、わたしの住む台湾の夏の庭からは、よく知っている匂いがした。
でもそれが何なのかすぐには分からなかった。
オレンジ、それも青い小さなもの。そして、ミント。ローズマリー。青い葉っぱの匂い。
海の匂い。名前の分からない赤い小さな花。プルメリア。どれも少しづつ混じっている気がする。
多分、風の流れでそういう自然の調合になったのだろうが、それはわたしのよく知っている匂いに限りなく近かった。いつもつけている香り。そして探し求めている香り。
わたしは、夏の庭の匂いがとても好きなのだと思う。
手元にある香水はすべて夏の庭の匂いがする。
旅先で蓄積されていく匂いの断片を常に追い求めているのだと思う。
夕方、庭先でかいだ匂いは偶然の調合。
でも、確かにわたしの大好きな夏の庭の匂いだった。
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2009.07.19 | コメント(0) | トラックバック(0) | プライヴェート
